系統用蓄電池のビジネスモデル

        系統用蓄電池は電力の需給バランスを調整することに貢献しますが、民間事業者がこれに参入し、系統用蓄電池の運用によって収益を得るというビジネスが生まれています。ここでは民間事業者が系統用蓄電池の設置および運用で収益を得ることができる3つの方法について解説します。

収益化方法1:卸電力市場にて売買(アービトラージ)

    最も取り組みやすいのは卸電力市場(JEPX)での売買差額で収益を得る方法(アービトラージ)です。電力が安価な時間帯に市場から購入・充電しておき、需要が増えて供給力が不足し電力が値上がりするタイミングで放電・売却することで利益を得ます。売買する電力の「量」と「市場価格の値差」によって収益を得るビジネスです。
    アービトラージは、3つの収益化方法の中では比較的手続き等が少なく済み、参入障壁が低いといえます。
    ただし、JEPX市場への参入には価格や需要を予測する専門的な知見が必要不可欠であり、市場での売り買いのタイミングを逃さない運用技術も必要となります。そのため、信頼できる事業者に系統用蓄電池の運用を委託することが現実的です。

収益化方法2:需給調整市場

    電力が不足、または変動する場合に、電気の供給や需要の抑制による「調整力」を取引する市場があり、「需給調整市場」と呼ばれています。日本の主要な再エネである太陽光や風力などの発電方式には、天候によって発電量が上下しやすいという課題がありますが、需給調整市場は需給のバランスを取ることで再エネの普及に貢献しています。
   系統用蓄電池もこの需給調整市場に参加が可能です。市場からの要請に従って貯めた電力を系統に放電することで、報酬を得ることができます。
    需給調整市場はすべての時間帯が取引の対象となるため、IoTを活用した遠隔自動制御によって蓄電池の稼働率を高めて収益を上げられるというメリットがあります。
    一方、デメリットのひとつは参入する際に規模の制約があることです。放電量は送配電事業者からの要請によるため、単独の系統蓄電池では要請された放電電力量に相当する量の電力調達が難しいケースが大多数です。
   また、送配電事業者からの要請を達成できなかった場合はペナルティが課され、取引停止となる可能性もあります。さらに制度変更が頻繁に行われて市場の要件が年々変更されているため、見通しが立てにくいことも難点といえます。
   それらを解決するのが「アグリゲーター」と呼ばれる複数の分散型電源を束ねてコーディネートする事業者です。アグリゲーターを介することによって、比較的小規模な系統用蓄電池でも取引市場への参加ハードルが緩和されるほか、必要な電力の調達、制度変更に関する情報提供やサポートを受けることもできます。

収益化方法3:容量市場

   容量市場は「将来必要となる供給力を取引する市場」です。再エネ電源の普及と電力自由化に伴って電力量の取引が活発化していますが、短期的な電力量の取引のみでは、発電所の新設や更新にかかる長期的な費用回収の見通しを立てにくくなるという課題があります。火力発電などの発電量を調整しやすい電源設備が不足すると、電力の不足時に適切に供給量の増加ができず、将来的に電力の安定供給に支障をきたす可能性があります。そのような事態を避けるために容量市場が2020年に創設されました。
   具体的には、容量市場で取引するのは「電力量(kWh)」ではなく「供給力(kW)」となります。供給力とは、必要なときに電気を供給する能力のことを指します。系統用蓄電池を活用して容量市場に参加することが可能で、蓄電池の出力を「発電能力の価値(kW価値)」として取引することで収益を得ます。
   容量市場の発動指令電源に参加すると電力供給の発動要請が年間で最大12回あり、その際には連続して3時間の応動が求められます。年間で最大36時間分、容量市場に対して稼働することになります。系統用蓄電池を最大限活かすには、平時は卸電力市場と需給調整市場で収益を得ながら、容量市場にも参加するとよいでしょう。
   デメリットとしては、実取引の4年前にメインオークションが実施されるため実際に収益を得られるのが遅くなることと、出力要請の発動タイミングが3時間前まで分からないため、機会損失やペナルティによる影響を受けやすいことです。